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D・W・Wの暗黒ブログ伝説


D・W・Wの館で公開した作品の後書きを主に綴った、暗黒ブログでござる! ツイッター開始しました。アカウント「dwwyakata」です。
by dwwyakata
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やとのかみ奇譚について。

 軽く後書きしてみます。






 あまり後書きは得意ではないのですが、かるくやとのかみ奇譚について触れてみようと思います。

・そもそもやとのかみとは
 夜刀の神は、日本の古文書である「常陸国風土記」などに登場する妖怪(邪神)で、見たものを族滅するという極めて強力な呪いに満ちた存在です。原本では、角を持った蛇のような姿として、描写されています。
 しかしその割には、色々と人間っぽい描写が多く。谷に住んでいるとか、木の上に集まっていたとか、開発に反抗したとか言う描写から考えて、明らかに土着の古い信仰と風習を残した現地住民達。いわゆる「まつろわぬ神」であった事は、ほぼ間違いないでしょう。つまり、特異な習慣を持ち、朝廷に反抗した人々が、後の時代に邪神として、神格化されたものというわけです。
 苛烈な呪いの描写から考えても、よほどに激しい抵抗をした存在だったことは間違いありません。拙作では個人として描写していますが、恐らくは一族そのものの呼び名であったのでは無いかと、個人的には考えています。
 情けない逃走ぶりについても常陸国風土記には記されていますが、これはおそらく、貶めるための意図があっての事でしょう。

・サンカについて
 まだ研究が進んでいない山の民、サンカ。
 明らかに日本の裏の歴史に関わってきているこの存在は、学者によって諸説が分かれていますが、拙者は朝廷に従わなかった人々の末裔説を採用しています。修験道や山岳信仰と結びついた寺院勢力、更には忍者などには、こういったサンカと関係が深い人々が多かったと思われます。実際に、独自の強力なネットワークを作っていたり、朝廷に対する反抗勢力だった蝦夷(事実、奥州藤原氏という形で、鎌倉時代の開始時まで、半独立勢力として生き延びています)と結びついていてもおかしくありません。源義経をバックアップしていたり、南北朝動乱の糸を引いていたのがサンカであっても、不思議では無いでしょう。(もちろん、説の一つとして聞いてください)
 この作品では、古代史におけるサンカという仕組みを作った存在として、ヤトという傑出したリーダーを描写していますが。実際には、血で血を洗う戦いの末、何十世代も掛けて、日本の裏側に独自のネットワークを作っていったのではないか。もしもサンカが日本の歴史の裏に潜んでいるのなら、それが真相のように、拙者には思えています。

・最凶だが、勝てない主人公
 今回の、やとのかみ奇譚における骨子こそが、この構図です。
 書き始めたときから何度も明言していますが、拙者はこの作品で、歴史を覆すような描写はしていません。勝ちを収めたのは大和朝廷ですし、どんだけ多大な被害を相手に出させても、ヤトは結局勝てないのです。たとえ、誰よりも優れた武力や、水準以上の優れた知力、並外れた判断力や、不可思議な力を持っていたとしても。
 集団としての、人間の恐ろしさ。
 国家というものが持つ、凄まじいまでの力。
 その前には、如何に最凶の邪神であっても、勝てない。
 それを今回、サンカの成立の影で尽力した者の歴史と同時に、描写したかったのです。
 他で指摘もされたのですが、今回の主人公ヤトは、性質などがかって書いた作品、DARKQUEENのクラナに近い部分があります。しかし、決定的に違う。
 クラナとヤトの違いは、「こだわり」にあります。
 クラナは己の生存のためには手段を選ばないバリートゥードルールな生き方を選んでいます。これに対して、ヤトは森の民であり、動物たちの守護者で管理者という立場を、最後まで崩していません。他の森の民を含めた人間には決して真似できないこの一種異様な生き方こそが、他を怖れさせる神への路となると同時に、「人間には勝てない」原因ともなっています。
 いうならば、神は信仰の対象であると同時に、最強でもあります。ただし、「不自由な」存在でもあるのです。ルールに基づいてしか動けないのが神です。終盤のヤトの自滅にちかい判断ミスは、此処から導き出されています。
 繰り返しますが、これらの行動については、最初から意図している作品構成上の戦略です。
 怖れられながらも、結局勝てなかった存在。
 何故、その存在は神とまで祭り上げられながら、勝てなかったのか。
 ヤトの場合は、「神」となったが故に勝てなかった。
 クラナの場合、人間を徹底的に軽蔑していながらも、社会を統率するとも言える存在になったが故に、善政を敷くと同時に、己の安全を確保することになった。
 その違いの意味を、読んだ後に考えていただければ幸いです。
 もしヤトが最終的な勝者になってしまっていたら、それは夜刀の神の物語ではなくなり、シナリオが根源から破綻してしまうものなのです。

・最後に
 拙者はいろいろな作品を書いてきましたが。今後も、作品に関する構成上の戦略は、最初から決めて書いていきます。
 こういうと嫌がる人もいるかも知れませんが。
 シナリオの中途修正はしません。
 これからもそうですし、今後もです。
 当然の話で、最初からあるプロットを崩せば、それだけシナリオが歪むことになります。
 ましてや、拙者の作品は、どれも基本的に、一般的なシナリオに比べればとんがっているものばかり。ちょっとバランスを崩せば、容易に破綻してしまうものなのです。ネット小説だからこそ、出来る事。それを近年、拙者は重要視して、実践しています。
 ブームなどにはのらない。
 商業ではタブーになっている事を、どんどん取り入れていく。
 自分の作風を柔軟に変化させ、様々な要素を実験していく。
 誰もが書いていないジャンルに、積極的に挑戦していく。
 だからこそに、この書き方が重要なのだと、理解していただければ幸いです。難しいかも知れませんが。
by dwwyakata | 2014-04-13 06:50 | 暗黒後書伝説! | Trackback | Comments(0)

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