D・W・Wの暗黒ブログ伝説


D・W・Wの館で公開した作品の後書きを主に綴った、暗黒ブログでござる! ツイッター開始しました。アカウント「dwwyakata」です。
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救いとはなんぞや。

 拙者個人として、どうしても社会一般の定義に納得できない事は結構多い。小説の技法におけるいわゆる「救い」というものもその一つでござる。
 ちなみに。多分拙者の作品を読んでいる人は分かると思うのでござるが、そんなものは最初っから度外視して拙者は書いております。理由は色々ありますが、最大の理由は「幸せというものは個人個人によって異なる」というものが一番大きいですかな。



 例えば、「こと寄せの地」の主人公の一人である高柳藍。彼女は異世界で猟奇殺人鬼として覚醒し、以降は殺しが何よりも大好きになります。それと同時に圧倒的な肉体能力も覚醒させたため、まさに鬼に金棒。彼女は生理的なレベルから殺しを最も好いてしまっているため、性的な快楽や味覚嗅覚といった五感も特に好ましいとは思わなくなってしまっている。
 さて、疑問。ではこの彼女にとって、幸せとは、救いとは何でござろう。
 結論から言えば、明確な答などありませんな。世間一般で言う最大公約数的な救いは勿論あるでしょうが、これが「救い」だなどというものはない。
 そもそも「救い」という概念自体が極めて曖昧で、人によって解釈が異なってくる代物。結局高柳藍は「こと寄せの地」にて、こちらの世界に帰ってきてからは完全に野放しになり、死ぬまでに五桁に迫る人間を手に掛けて、思う存分殺しを満喫してから天寿を全うする訳でござる。
 勿論これは、世間一般で良く言われる「救い」に対する拙者からのアンチテーゼでござる。もっとも生物的原理的な幸せを藍は享受した訳で、本人は死ぬまで満足しきっていた。これは「幸せ」な状況であり、本人は充実しきった生の中にいたわけでござるな。しかし、これは世間一般で言う「救い」とは離れている。何故か。
 社会と乖離しているからでござる。
 どういうわけか、世間一般の理論では、救いとはどうしても社会を基幹に置かれる存在でござる。みんなと仲良くなってめでたしめでたし。みんなを守ってめでたしめでたし。誰かと仲直りできてめでたしめでたし。友達が出来てめでたしめでたし。
 ……ふむふむ。つまり、社会形成の手段であるコミュニケーションが救いになっているわけであり、それ以外でも以上でもない。となってくると、その理論が正である限り、コミュニケーションが根本的に苦手な存在、もしくは出来ない存在は「救い」を享受する資格がない訳でござるな。
 人間は社会を構成して発展してきた生き物でござる。社会を何故構成したかについてはまた持論があるのでござるが、それは今回はさておくとしましょう。だから、その理論が社会を基幹とするのは無理もない事。だが結局の所、社会を基幹とすると言うことは、社会からの落伍者には存在の意味を認めないと言う事でもある。
 だから、高柳藍の末路に関して、「そういう奴は死なせてやることが救いである」などという理論は却下しました。それは要するに、社会的な生活が送れない人間は殺してやるのが情けだというのと同じだからでござる。
 孤独な人間に価値はないのか?コミュニケーションを取らない人間は存在する意味がないのか?否。それは否!歴史上の偉人に、他人を遠ざけ偉業を成し遂げたものなど幾らでもいる。引きこもりだった小説家だっているし、マッドサイエンティスト像の原型となった天才博士だっている。
 拙者は、社会に絶対価値を見出していない。社会にどうしても同化できない人を知っている。勿論手を差し伸べて欲しがっている人はいるだろう。だがしかし、それが全てではないはずだ。それを無理に社会に同化させることだけが、救いではないはずだ。彼らをありのままの姿で「救い」たい。だから、自分の作品にて、社会に起因しない「救い」を模索したい。だから今後も世間一般で良く言われる「救い」とは別の方向を模索していきますが、よろしくお願いいたしますぞ。
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by dwwyakata | 2007-01-28 17:36 | 小説万歳! | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from つきかげの消息記 at 2007-02-04 21:11
タイトル : 気弱で優しい新世代の「自分探し」
■今回取り上げますのは、前回に引き続きまして『D・W・Wの館』さんのオリジナル小説『白虎戦舞』の第二部「陽の翼編」。 ■とはいえこの作品、実はまだ完結前でして(現在、コンスタントに執筆・公開されているご様子で、一読者として好感が持てる点です)、今の時点...... more
Commented by Sa-Q at 2007-02-04 21:35 x
こんばんは。Sa-Qです。

実は、『こと寄せの地』で最も考えさせられたのが高柳藍の「その後」でした。仰るように「そういう奴は死なせてやることが救いである」などというのは論外です。これが極端化すれば、まさに「優生学」。ナチスが推し進めた思想ですね。

読後、すぐに感じたのは「確かに、欲望を満喫しきり、天寿を全うするのは“幸せ”かもしれない。でもそれは、欲望から自由ではない、ある種の“桎梏”の中にあったことではなかったか」ということでした。
でも、これもよく考えてみれば、彼女の欲望は生理的なレベルに根ざすものなので、言ってみれば普通の人に「睡眠から、食欲から、性欲から自由ではないだろう」というようなものでしょうか。

睡眠などの欲望は、ある程度は「コントロール」可能で、限定的には自由になれる、とも言えますが、察するに、高柳藍も「その程度」には、欲望をコントロールしていたようでもありますね。

コーネリアの地で「快楽」をしっかりと覚えてしまった藍と、草虎のサポートがあって岩塩スティックによる「コントロール」を覚えた『白虎戦舞』の零香。一概にどちらが「幸せ」とも言えないし、いろいろと前提条件や環境も違いますが、「守るべきもの」を自分が傷つけないようにコーネリアを離れた藍と、「守るべきもの」がある故にそこに留まり、欲望をコントロールしつつ「共存」していく零香。対照的で興味深いです。

後余談なのですが、明治期に作られた単語であるはずの「社会」という言葉を、作中で家康が何度も使っていることに少し違和感を感じたのですが、これは、こと寄せ作動時の「翻訳魔法」が、コーネリアの言葉に訳した際の「意訳」だったのだと思っています(笑)。
Commented by D・W・W at 2007-02-05 19:37 x
 コメント及び丁寧な感想+批評有り難うございます。
 救いと幸せの関係に関しては、毎回作中で頭を悩ませる所です。世間一般で言う救いはブログにも書いたとおり最初から度外視していますが、何がどうなれば幸せなのか、それによって人間はどう変わるのか、といった辺りのことは常に深部まで詰めて考えるようにしています。その辺りをくみ取って頂けて、実に有り難い所です。
 白虎戦舞第二部の批評も拝見しました。深い所まで読んで頂いているようで、作者冥利に尽きます。今回も十二話構成なので、もうすぐお終いですが、最後までおつきあいの程お願いいたします。

 あ、それと「社会」についてですが、意訳と考えておいてください(笑)

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